天津飯のあんが甘すぎたり酸っぱすぎたりして、味が決まらない。そんな経験はありませんか。
レシピサイトを見比べても、黄金比の数字がバラバラで、どれを信じればいいのか迷ってしまいますよね。
僕はホテル中華の現場で、甘酢あんのタレを先に仕込んでおき、お玉ですくって使っていました。
甘酢あんの型から、あんの黄金比を組み立てています。
黄金比の正体は、調味料1:1:1とスープの量の2つだけです。
黄金比の考え方が分かれば、「あんが決まらない」と毎回迷うこともなくなりますよ。
天津飯のあん|材料と作り方(早見表)
天津飯のあんは、材料も工程もシンプルです。まずは全体の流れをつかんでから、細かいコツを見ていきましょう。

材料(1人分)
| 区分 | 材料 | 分量 |
|---|---|---|
| 調味料 | 鶏ガラスープ(表示どおりに溶く) | 大さじ6 |
| 酢 | 大さじ1 | |
| 醤油 | 大さじ1 | |
| 砂糖 | 大さじ1 | |
| ごま油(仕上げ) | 少々 | |
| 粉類 | 水溶き片栗粉(片栗粉:水=1:2) | 片栗粉小さじ2+水小さじ4 |
| 油 | サラダ油(卵用) | 大さじ1程度 |
| 卵・具材 | 卵 | 2個 |
| カニカマ | 2〜3本 | |
| 長ねぎ | 5cmほど | |
| 塩 | ひとつまみ | |
| こしょう | 少々 | |
| ご飯 | 白ご飯 | 茶碗1杯(150〜200g) |
スープ:酢:醤油:砂糖 = 6:1:1:1(大さじで量った比率)
毎回同じ鶏ガラスープの素を使うと、味の再現性が上がります。僕が現場でも家でも使っているのは、このあたりの製品です。
作り方
「黄金比」がバラバラに見える理由

天津飯のあん、調べるたびに数字が違って、どれを信じればいいか分からないんだよね
黄金比を調べると、記事によってスープの量も酢の量も違って見えます。実は、違いには理由があります。

酢・醤油・砂糖は1:1:1が多い
多くのレシピで、酢・醤油・砂糖の比率は1:1:1に近い形で使われています。細かい違いはあっても、調味料そのものの比率は意外と揃っているんです。
違うのはスープの量
いちばん違うのは、スープの量です。同じ人数分でも、スープが少なめのレシピもあれば、たっぷり使うレシピもあります。
スープの量が変われば、同じ調味料でも味の濃さは変わります。「黄金比がバラバラに見える」いちばんの原因は、スープの量にあります。
黄金比を知るには、調味料の比率とスープの量を、分けて考える必要があるんです。
- 酢・醤油・砂糖 → だいたい1:1:1
- いちばん差が出るのは → スープの量
甘酢あんの黄金比は6:1:1:1
酢・醤油・砂糖の比率が分かったところで、次はスープの量です。ここに、黄金比のもう一つの鍵があります。

スープは調味料の6倍
酢・醤油・砂糖は、それぞれ大さじ1。スープは、その6倍の大さじ6です。
スープが少なければ味が濃くなり、多ければ物足りなく感じます。大さじ6は、試作で確かめたバランスです。
スープの量を調味料の倍数で決める考え方は、醤油あんでも使えます。八宝菜では、スープを醤油の10倍にしています。
▶八宝菜の味付けは黄金比「4:3:3:2」|水っぽくならない醤油あんを元中華料理人が解説
あんの塩分を、卵とご飯まで含めた一皿全体で見ると、だいたい0.7%前後になります。使う鶏ガラスープの素によって、多少前後します。
塩分を「比率」で考える視点は、他の料理にも応用できます。くわしくはこちらで解説しています。
【プロが断言】自分で作った料理が美味しくない理由。レシピを捨て「比率」で考える本格中華上達法
酢・醤油・砂糖、それぞれの役割
酢・醤油・砂糖には、それぞれ違う役割があります。
酢は煮立てると、ツンとした刺激が和らぐと言われています。そこに砂糖の甘みが入ると、酸味をやわらかく感じやすくなります。
あんが琥珀色になるのは、醤油の色によるものです。
| 調味料 | 役割 |
|---|---|
| 酢 | 酸味をつける |
| 醤油 | 塩味とコク、色をつける |
| 砂糖 | 甘みとまろやかさをつける |
あんだけで味見すると少し濃い

あんだけスプーンで味見したら、けっこう濃かったよ。これで大丈夫なの?
少し濃いと感じるくらいが正解です。
あんは、卵とご飯の上にかけて食べる料理です。あん単体の濃さのまま、卵やご飯と合わさるわけではありません。
ご飯の量や卵の火加減によっても、感じる濃さは変わります。あん単体では少し濃いくらいが、皿全体でちょうどよくなるように作られています。
「タレだけ味見すると濃い」の考え方は、オイスターソース炒めでも同じです。くわしくはこちらの記事で解説しています。
【現役調理師が公開】オイスターソース炒めの黄金比と、二度と味が迷わなくなる中華炒めの型
タレは先に合わせておく
甘酢あんの調味料は、鍋の中で少しずつ計りながら加えるのではありません。作り方の最初の段階で、合わせ調味料としてまとめて作っておきます。
タレを先に合わせておく考え方は、黒酢あんでも同じです。あわせて読むと、段取りのコツがつかみやすくなります。
▶鶏と野菜の黒酢あん|タレは1:1:1。油通しを3つに分けるのがプロの作り方
理由は、卵にあります。
天津飯の卵は、焼き始めたら止まりません。強めの中火で、一気に混ぜて仕上げる工程です。そこで調味料を計っている余裕はありません。
タレを先に合わせておくのは、卵の火加減に集中するためです。


卵を焼きながら調味料を計るのは、現場でも無理な話だよ。あんは先に用意しておくのが鉄則なんだ
配合は酢豚のほうが甘めですが、「先に仕込んでおく」やり方は共通しています。ホテルの厨房での話は、こちらの記事で紹介しています。
卵は裏返さず、半熟でのせる
天津飯の卵は、炒め物と違って一度きりの勝負です。ここからは、卵を焼くときのポイントを見ていきます。

天津飯の卵を一気に仕上げるには、薄手の鉄鍋が向いています。僕が家で使っているのもこの鍋です。
具は卵液に混ぜておく
水分の出やすい具を増やすと、卵液がゆるくなり、半熟がまとまりにくくなります。カニカマと長ねぎだけのほうが、卵の食感がまとまりやすいんです。
カニカマは手で細かくほぐし、長ねぎは小口切りか斜め薄切りにします。塩ひとつまみとこしょう少々を加え、卵液としっかり混ぜておきます。

椎茸やたけのこを加えたい場合は、先に軽く炒めてから卵液に混ぜます。生のまま入れると、卵が固まるまでに火が通りきらず、水分も出やすくなります。
油は多め、火は強めの中火で大きく混ぜる
中華鍋を強火で熱し、うっすら白い煙が立つまで温めます。油を多めに入れてなじませたら、いったんオイルポットに戻す「油返し」をしておきます。
油返しのやり方や、鍋を長持ちさせるお手入れのコツは、こちらの記事にまとめています。
▶中華鍋の育て方。使い始めの空焼きから、洗い方・焦げ付き対処まで
そこへ油を大さじ1ほど入れ、強めの中火にします。
卵液は一気に流し入れます。ジュッと音がして、縁がふくらんだら火が入り始めているサインです。
- 音:ジュッという音がする
- 見た目:卵の縁がふくらむ
卵液を入れたら、お玉で外側から内側へ、大きくゆっくり3〜4回混ぜます。細かく混ぜすぎると、卵がボソボソになってしまいます。

卵をゆっくり大きく混ぜる動作には、お玉の重さと長さが効いてきます。僕が使っているのはこのあたりのタイプです。
裏返さない理由

半熟でのせて、生っぽくならない?
半熟の状態で皿にのせても、卵の中心は余熱でゆっくり火が入り続けます。
卵液は、だいたい73℃前後でちょうどよく固まると言われています。
皿にのせたあとも外側の熱が伝わるので、生っぽさは気になりにくくなります。
裏返さないことで、半熟の食感とあんの絡みやすさを両立できます。

卵が固まる温度の仕組みは、中華たまごスープでも同じです。卵を入れるタイミングは、こちらで解説しています。
ふわふわか、ボソボソか。中華たまごスープで卵を入れるタイミングとその理由を元中華料理人が解説
とろみは後から入れる
あんのとろみは、最後の仕上げです。ここでの一手間が、あんの状態を大きく左右します。

水溶き片栗粉は1:2で別に溶く
ホテルの厨房では、水溶き片栗粉を1:1の濃いめで作り、キッチンポットにまとめて仕込んでいました。
家庭で作るときは、片栗粉1:水2の、少し薄めの配合がおすすめです。天津飯のあんでも、片栗粉小さじ2:水小さじ4という、同じ1:2の配合で作ります。
- ホテルの厨房:片栗粉1:水1(濃いめ)
- 家庭:片栗粉1:水2(薄め)

濃いめだとダマになりやすく、少量ずつ調整するのが難しくなります。薄めにしておくことで、家庭のコンロでも扱いやすくなります。
水溶き片栗粉の割合や入れ方は、こちらの記事でさらにくわしく解説しています。
水溶き片栗粉の黄金比は1:2|割合・作り方とダマ防止の入れ方を元中華料理人が解説
火を止めて入れ、ツヤが出るまで煮る
合わせ調味料を沸かしたら、一度火を止めます。水溶き片栗粉をよく混ぜ直してから、少しずつ加えます。
再び中火にかけ、フツフツと軽く沸いた状態で、1分以上を目安に混ぜながら煮ます。
ツヤと透明感が出てきたら、とろみが安定したサインです。白っぽいままだと、まだ加熱が足りません。

味見したスプーンをそのまま鍋に戻すと、とろみが崩れる原因になることがあります。
調理師専門学校では、お湯だけで水溶き片栗粉のとろみをつける練習を繰り返していました。目でとろみの変化を確認する、基礎の練習です。
最初から混ぜる方法との違い
調味料と水溶き片栗粉を、最初から一緒に混ぜておく作り方もあります。手順が減り、手軽に作れる方法です。
ただ、あんの量は、煮詰まり方によって多少変わります。後から片栗粉を加える作り方なら、煮詰まり具合を見てから、とろみの強さを調整できます。
天津飯のあんでは、火を止めてから加える方法で統一しています。どちらの方法でも作れるので、慣れてきたら試してみてください。
黄金比どおりでも決まらない原因

黄金比どおりに作ったのに、なんか思ってた味と違う気がする
黄金比は出発点です。ここから、味がブレる3つの原因を見ていきます。

煮詰め具合とスープの濃さ
原因の一つは、鶏ガラスープの素です。
鶏ガラスープの素は、製品によって塩分濃度が違います。だいたい28%〜48%と、かなりの差があります。
同じ大さじ6を使っても、製品によって塩気は変わります。表示どおりに溶いても、製品差までは黄金比では吸収できません。
鶏ガラスープの素の塩分差は、製品ごとに比較した記事でくわしく解説しています。
▶鶏ガラスープの素の使い方|スープと炒め物で「濃さ」を変えるのがプロのやり方
もう一つの原因は、煮詰め具合です。火にかけている時間が長いと、水分が飛んで味が濃くなります。
比率が同じでも、鍋の中の状況によって仕上がりの濃さは変わります。
あんの量ととろみの強さ
あんの量も、味の感じ方に影響します。少なすぎると、卵とご飯に対して味が単調になりがちです。多すぎると、全体がべたついた印象になります。
とろみの強さも見逃せません。とろみが強いと、同じ味でも薄く感じることがあります。片栗粉を入れすぎていないか、確認してみてください。
- スープの塩分は、製品によって違う
- 煮詰めすぎていないか
- とろみが強すぎないか
黄金比を出発点として、仕上がりを見ながら微調整する感覚も持っておくと安心です。
塩あんにも応用できる
甘酢あんの型から、酢・醤油・砂糖を抜き、酒と塩で味を決めれば塩あんになります。

| 材料 | 分量(目安・1人分) |
|---|---|
| 鶏ガラスープ(表示どおりに溶く) | 大さじ7 |
| 酒 | 小さじ1 |
| 塩 | 小さじ1/4〜1/3 |
| 白こしょう | 少々 |
| 水溶き片栗粉 | 甘酢あんと同じ配合 |
| ごま油(仕上げ) | 少々 |
塩は、小さじ1/4から少しずつ試すのがおすすめです。味を見ながら、小さじ1/3までの範囲で調整してください。
とろみのつけ方は、甘酢あんとまったく同じです。火を止めて水溶き片栗粉を加え、ツヤが出るまで煮ます。
鶏ガラスープに塩を先に溶かしておく考え方は、塩炒めで使う「ひん湯」(鶏ガラスープに塩を溶かした、塩炒め用のタレ)と近いところがあります。
ひん湯の作り方や、塩炒めでの使い方は、こちらの記事でくわしく解説しています。
▶なぜプロの塩炒めはツヤツヤでシャキシャキなのか。現場で使い続けた「ひん湯」という答え
関東は甘酢、関西は醤油や塩のあんが多いと言われています。好みや気分に合わせて、味を選んでみてください。
まとめ|あんは1:1:1、濃さはスープで決める
天津飯のあんで、覚えておきたいポイントは、それほど多くありません。
- 甘酢あんの黄金比 → 酢・醤油・砂糖は1:1:1、スープはその6倍
- 卵は裏返さず、半熟でのせる
- とろみは、火を止めてから後入れする
酢・醤油・砂糖は、同じ量で揃えるだけです。スープの量で、味の濃さを調整します。
卵は、大きく混ぜて半熟で火を止めます。余熱でも火が入っていくので、裏返さなくて大丈夫です。
とろみは、あんを煮立てたら一度火を止め、水溶き片栗粉を加えます。ツヤと透明感が出れば完成です。


この比率さえ覚えておけば、人数が変わっても、迷わず量れるよ
■ 本格中華を極める3つのロードマップ
ここまで読んでいただきありがとうございます!
あなたの「もっと上達したい」に合わせて、3つの道を用意しました。
①【🎓理論】失敗しない理屈を学びたい
②【😋実践】プロの味を今すぐ再現したい
③【🔪道具】形から入って、料理の質を底上げする








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