レシピに「紹興酒」とあっても、家にあるのは料理酒だけ、ということはありませんか。
実は、家の料理酒には塩が入っていることがあります。紹興酒とは、原料も造り方も別物です。
僕は元中華料理人です。ホテル中華の厨房では、「酒」といえば紹興酒のことでした。
料理酒は置いていませんでした。今は給食現場に立つ現役の調理師です。
この記事では、紹興酒・紹興料理酒・日本の料理酒の3種類をラベルで比べます。代用できる場面とできない場面、入れるタイミングもまとめました。
読み終える頃には、紹興酒と料理酒の違いを、ラベルのどこで見分ければいいか判断できるようになります。
違いは、原料と香り、そして塩の有無です。塩入りかどうかは、名前でなく、ラベルの食塩で見分けます。
厨房で「酒」といえば紹興酒だった

僕がいたホテルの厨房では、飲用の紹興酒を料理に使っていました。
料理酒は、そもそも置いていませんでした。

え、酒って日本酒のことじゃないの?

違うんだよ。厨房で「酒」って言えば、紹興酒のことだったんだよ
炒め物にもスープにも、紹興酒を使っていました。
炒め物では、紹興酒を鍋に振り入れる動作を「酒を打つ」と呼んでいました。
「打つ」は、まいて散らすという意味です。打ち水の「打つ」と、同じ使い方です。
「酒を打つ」とは
鍋に酒を振り入れる動作のこと。「打つ」=まいて散らす。打ち水の「打つ」と同じ使い方です。
家庭のレシピに出てくる「酒」と、厨房で使っていた「酒」は、指すものが違います。
紹興酒と料理酒は、何が違うのか。原料や造り方の違いから見ていきます。
紹興酒と料理酒、何が違う?

紹興酒と料理酒は、原料が違います。塩が入っているかどうかで、酒税の扱いも変わります。順番に見ていきます。
紹興酒は中国の醸造酒
紹興酒は、中国・浙江省紹興市で造られる醸造酒です。
もち米と麦麹を原料に造られています。

中国では、紹興市で決まった原料と造り方を守ったものを「紹興酒」とする基準があるとされています。
紹興酒は酒類の一種なので、酒税がかかります。
日本の料理酒は塩入りが多い
日本の料理酒には、塩が入っているものと、入っていないものがあります。
ラベルの名称欄を見ると、見分けられます。
「醸造調味料」や「発酵調味料」と書かれているものは、塩を加えて造られています。
塩を加えることで、酒として飲めない扱いになり、酒税がかかりません。

「清酒」と書かれているものは、塩が入っていません。日本酒と同じ扱いで、酒税がかかります。
「醸造調味料」など:塩入り・酒税なし
「清酒」:塩なし・酒税あり
一般に、レシピに書かれた「酒」は、塩の入っていない清酒を指すとされています。
紹興酒タイプの料理酒もある

料理用って書いてあれば、全部同じじゃないの?

実は違うんだよ。紹興酒にも、塩を加えたタイプがあるんだ
紹興酒にも、塩を加えて造った「紹興料理酒」があります。

家にある業務スーパーの紹興料理酒も、塩入りタイプです。原材料には、もち米・麦麹と並んで、食塩が入っています。

塩を使わない紹興酒タイプの商品もあります。
紹興酒・紹興料理酒・日本の料理酒を、まとめて比べてみましょう。
| 項目 | 紹興酒 | 紹興料理酒 | 日本の料理酒(塩入りタイプ) |
|---|---|---|---|
| 塩 | なし | 入っている | 入っている |
| 酒税 | かかる | かからない | かからない |
| 用途 | 飲用・料理用 | 料理専用 | 料理専用 |
業務スーパーが近くにない場合は、通販でも塩入りタイプの紹興料理酒が購入できます。
家の2本を比べてみた
自宅にある紹興料理酒(業務スーパー)と、ワダカンの料理酒を並べてみました。

| 項目 | 紹興料理酒 | 料理酒(ワダカン) |
|---|---|---|
| アルコール分 | 11% | 14.5%以上15.5%未満 |
| 塩(ラベル表記) | 食塩相当量2.2g/100ml | 塩分2.3%以上 |
2本とも、塩入りタイプでした。表示の単位が違うので、塩の量は単純には比べられません。
小皿に注ぐと、色からして違います。
紹興料理酒は、はっきりした琥珀色でした。料理酒は、ほぼ透明に近い、淡い黄色でした。

香りも別物でした。紹興料理酒は、香ばしい香りがしっかり立ちます。料理酒は、香りが控えめでした。
僕が比べた印象では、味も紹興料理酒のほうが、コクを感じました。
香りや味の差には、原料だけでなく、発酵や熟成の違いも関わっていると考えられます。
見分けるのは名前でなく「食塩」
紹興酒と料理酒は、名前だけでは見分けられません。「紹興料理酒」も「料理酒」も、似た名前だからです。
見るべきは、ラベルの名称欄と、原材料欄の食塩です。
名称欄で酒の種類を、原材料欄の食塩で塩入りかどうかを確かめます。

- ラベルの名称欄
- 原材料欄の食塩
塩入りかどうかは、名前でなく、ラベルの食塩で見分けます。
名称と食塩、この2つを見れば、選ぶ基準がはっきりします。
名前が紛らわしい調味料は、紹興酒と料理酒だけではありません。「老抽」と「老酒(紹興酒のこと)」も、響きが似ているだけでまったくの別物です。
老抽と老酒、間違えていませんか?老抽王(ラオチョウワン)の正体と使い方
料理酒で代用できる?

料理酒で、紹興酒の代わりになるのか。気になるところだと思います。役割で分けて考えると、答えが見えてきます。
代用できる役割
料理酒は、臭み消しと下味づけに使えます。
酒をふって加熱すると、アルコールと一緒に臭みの成分が飛んでいきます。
塩入りタイプなら、下味をつける役割も果たします。

調味料が、食材にしみ込みやすくなるとも言われています。
肉をやわらかくする効果もある、と言われています。
- 臭み消し
- 下味をつける
- 調味料をしみ込ませる
これらの役割なら、料理酒で十分です。ただし、料理酒の塩の分だけ、味付けの塩を控えめにします。
炒め物の黄金比でも、酒は同じ役割を担っています。鶏ガラスープ・オイスターソース・醤油・酒・砂糖を1:1:1:1:1で合わせる型の中で、酒は臭み消しと香り立てを担当しています。
【現役調理師が公開】オイスターソース炒めの黄金比と、二度と味が迷わなくなる中華炒めの型
代用できない役割
料理酒で代用できないのが、紹興酒ならではの香りです。日本の料理酒でも香りはつきますが、紹興酒の香ばしさとは別物です。
自宅で、料理酒を紹興料理酒に替えたとき、香りの違いをはっきり感じました。
小皿で比べても、紹興料理酒のほうが、香ばしい香りが強く残っていました。
紹興酒特有の香りは、料理酒では代用できません。
紹興酒が主役になる料理もあります。紹興酒蒸し(紹興酒で蒸す料理)や、酔鶏(火を通した鶏を、紹興酒に漬け込む料理)などです。

紹興酒そのものの香りを楽しむ料理なので、代用には向きません。
こうした料理では、料理酒への置き換えを避けたほうが安心です。

じゃあ、家の料理酒じゃダメってこと?

役割によるんだよね。香りだけは、代用がきかないんだ
料理酒で代用できる場面とできない場面を見てきました。次は、酒を入れるタイミングを見ていきます。
入れるタイミングは「熱」で決まる

紹興酒も料理酒も、入れるタイミングで仕上がりが変わります。
ポイントは、どれだけ熱が入っているかです。
加熱すると、ツンとした匂いは抜けていきます。ただし、アルコールがすべて飛ぶわけではありません。
長く煮込んでも、アルコールが完全になくなるわけではないとされています。
火力や加熱時間によって、残る量は変わります。
大事なのは、香りを残しながら、ツンとした匂いをやわらげるタイミングです。
炒め物は鍋肌から
炒め物では、紹興酒や料理酒を、鍋肌から加えます。
具材がのっていない鍋肌は、食材の水分で冷やされないため、高温になりやすい部分です。
鍋肌に酒を注ぐと、ジュッと音がして、香りが立ちます。


鍋肌からジュッと入れると、香りが立つ
火力の強い炒め物や炒飯なら、仕上げに加えても間に合います。
鍋肌の高温で、短い時間でもツンとした匂いがやわらぎます。
具材のない鍋肌が高温になりやすいという点は、上海焼きそばのタレ作りにも共通しています。
上海焼きそばをホテルの味に。プロが教える「比率」と「火入れ」の絶対法則
スープは途中で入れる
スープなどの煮込み料理では、途中で加えます。

炒め物のように、瞬間的な高温がないからです。
煮る時間をかけて、ツンとした匂いを飛ばしていきます。
炒め物:鍋肌から。火力が強ければ仕上げでも間に合う
スープ:煮ている途中で加える
炒め物とスープでは、酒を入れるタイミングが違います。共通しているのは、香りを残しながら、ツンとした匂いをやわらげるという考え方です。
紹興酒にも料理酒にも、塩が入っている場合があります。塩の量によって、味付けも変わってきます。
塩入りの酒は味付けを変える

紹興料理酒には、塩がどれくらい入っているのでしょうか。計算しながら見ていきます。
大さじ1で塩が約0.3g

料理酒に塩が入ってるなんて知らなかった

実は結構入ってるんだよ。計算するとわかりやすいよ
家にある紹興料理酒(業務スーパー)は、100mlあたり食塩相当量2.2gです。
大さじ1(15ml)で計算すると、約0.33gの塩が入っている計算になります。
2.2g ÷ 100ml × 15ml = 約0.33g(大さじ1あたりの食塩相当量)
商品によって塩の量は違います。使う前に、ラベルの食塩相当量を確認してください。

調味料に隠れた塩分は、紹興料理酒だけではありません。鶏ガラスープの素も、多くの製品で、原材料の一番最初にあるのは鶏ではなく食塩です。
鶏ガラスープの素の使い方|スープと炒め物で「濃さ」を変えるのがプロのやり方
酒の塩も、いつもの目安に含める
紹興料理酒を使うときは、酒の塩も、いつもの塩分の目安に含めて考えます。
具材300gなら、塩分の目安は約2.4gです(以前の記事で紹介した「0.8%の法則」と同じ考え方です)。
紹興料理酒を大さじ2使うと、酒からすでに約0.66gの塩が入っています。
あとから加える塩や醤油は、その分、控えめにします。
具材300gの塩分目安:約2.4g
酒の塩(大さじ2で約0.66g)も、その中に含める

塩の量だけを気にすればいいわけではありません。
入れすぎると、塩だけでなく、酒の味そのものが前に出てしまいます。
僕自身、スープに酒を入れすぎて、酒の味が前に出すぎたことがあります。
塩分の目安を守りながら、酒の量にも気をつける。この2つが、失敗しないコツです。
最後に、家庭での選び方を整理します。
まとめ|家庭での選び方

紹興酒と料理酒について、ここまで見てきました。要点を振り返ります。
- 原料が違い、塩の有無で酒税の扱いも変わる
- 塩入りかどうかは、名前でなくラベルの食塩で見分ける
- 臭み消しや下味は代用できるが、紹興酒の香りは代用できない
- 入れるタイミングは、炒め物なら鍋肌から、スープなら途中で
- 酒の塩も、いつもの塩分の目安に含める
これらを踏まえると、家庭での選び方が見えてきます。
香りを求めるなら、紹興料理酒がおすすめです。
下味をつけたいだけなら、家にある料理酒でも十分です。
僕は自宅で、紹興料理酒を使っています。香りと味が、料理酒よりもしっかりしているからです。
塩入りの料理酒から飲用の紹興酒に替えるときは、減った塩の分を味付けで補います。
食塩無添加の紹興酒は、料理だけでなくそのまま楽しむこともできます。

うちの紹興料理酒とワダカンの料理酒、これで使い分けられそう

まずはラベルの食塩を見るところからだね
紹興酒と料理酒は、名前でなく、ラベルの食塩で選んでみてください。
■ 本格中華を極める3つのロードマップ
ここまで読んでいただきありがとうございます!
あなたの「もっと上達したい」に合わせて、3つの道を用意しました。
①【🎓理論】失敗しない理屈を学びたい
②【😋実践】プロの味を今すぐ再現したい
③【🔪道具】形から入って、料理の質を底上げする






コメント