【家の中華が「店」に変わる】オイスター炒めの黄金比と、塩炒めの土台『ひん湯』

家の中華が「店」に」変わる オイスター炒めの黄金比と、塩炒め

家庭で中華料理を作ると、なぜかお店のように仕上がらない。

野菜は水分が出てベチャッとし、塩やオイスターソースで味付けしても、濃かったり薄かったり味が決まらない、、、そんな経験はありませんか。

多くの人は、「火力が弱いから」「鍋が違うから」と考えがちです。しかし実は、それが原因ではありません。中華料理人は、家庭用のコンロでも安定して美味しい炒め物を作っています。そこには、誰でも再現できる決まった考え方と味付けの型があります。

僕が、これまで中華を学んできて気づいたのは、炒め物の美味しさは技術ではなく、事前の準備と味付けのルールでほぼ決まるということです。

この記事では、オイスターソース炒めの黄金比と、塩炒めを格上げするプロの考え方「ひん湯(鹹湯)」を、家庭向けにわかりやすく解説します。
ポイントを押さえれば、家庭の中華炒めは確実に変わります。

中華炒めの基本

かーべ
かーべ

家で炒め物をつくると、シャキッとしないし、味も決まらないんだよね

料理長
料理長

その原因は、火力や鍋じゃないよ。基本の「型」を知らないだけなんだ。
失敗を招く原因と、それを解決する鉄則を見ていこう

中華炒めがベチャッとする最大の原因は、野菜から出る水分です。家庭でやりがちな「炒めながら味を足す」という行為は、鍋の温度を一気に下げてしまいます。

鍋の温度が下がると、野菜は一気に水を出します。
また、調味料を入れるタイミングが遅れるほど、炒め物は水っぽくなりがちです。さらに、調味料が均一に混ざらないまま火が通ることで、味にムラが生まれます。

ちゃーりー
ちゃーりー

そうすると、「炒め物」というより「煮物」になってしまうね

野菜から水分が出るメカニズムについて少しだけ解説していきたいと思います。

野菜のシャキシャキ感は、細胞の中に水分がぎゅっと詰まっていることで生まれます。
この状態を、専門的には「膨圧(ぼうあつ)」と呼びます。

野菜の細胞は熱にとても弱く、長く火にかけたり、塩分が一気に当たったりすると簡単に壊れてしまいます。
細胞が壊れると、中に詰まっていた水分――つまり旨味ごと外に流れ出てしまいます。

その結果、フライパンの中は水っぽくなり、野菜はシャキシャキではなく、しんなりしてしまうのです。

ちゃーりー
ちゃーりー

これをふまえて、炒め物をシャキッとおいしく仕上げるコツを説明していくよ

家庭のキッチンで、ボトルを開け、計量スプーンを持ち、レシピを見返しながら――
その数十秒で、炒め物としてのベストな瞬間は過ぎてしまいます。

料理長
料理長

プロの現場では、炒めながら調味料を足していくこともあるよ。
でもそれは、コンロの目の前に調味料がすべて並び、片手で鍋を振りながら、もう片方の手で一瞬で分量を決められる環境があるからなんだ

だからこそ入れる調味料は、合わせ調味料として混ぜ合わせておきましょう。
食材は、あらかじめ火を通してザルにあげておきます。広東料理では、沸騰したお湯に多めの塩を入れ、下茹でする隈(わい)という作業をします。お肉などを香ばしく仕上げたい場合は、油通しをする場合もあります。

料理長
料理長

油通しとは、高温の油に数秒くぐらせ、食材の表面をコーティングする下処理だよ。家庭では、しっかり焼くだけでも同じような効果があるよ

先に合わせ調味料を作り、食材に火を通しておくことで、炒める工程は、4つだけになります。
これが中華炒めの「調理の型」になります。

調理の型(炒め物の型)
  1. 隈に使った湯は捨て、鍋をさっと拭いてから強火にかけます。
  2. あらかじめ作っておいた合わせ調味料を鍋に入れ、しっかり沸騰させます。
  3. 火を止めてから水溶き片栗粉を加え、全体をよく混ぜます。混ざったのを確認したら、再び強火にかけとろみをつけます。
  4. 最後に、ザル(炸鏈ザーレン)で待たせていた食材を鍋に戻します。強火のまま、たれを絡めます。
最後に香り付けに胡麻油を適量回し入れると美味しくなります。

この「調理の型」をベースに、このあと【オイスター炒め】【塩炒め】の作り方を解説していきます。細かい味付けは変わっても、やることは同じです。まずはこの型を、頭に入れておいてください。

かーべ
かーべ

これなら考えることも少なくなって、食材に火が入りすぎることを防げるね

ちゃーりー
ちゃーりー

合わせ調味料や、広東料理の技法【隈】、それから「調理の型」については、別の記事でじっくり解説しているよ

詳しくはこちら
【プロが断言】レシピの分量通りで失敗する理由。料理が美味しくならない罠と解決策

もうひとつ重要なことは、具材の切り方を揃えることです。

中華炒めで具材の形を揃えるのは、見た目のためではありません。シャキシャキ感を、すべての具材で同時に守るためです。

大きさがバラバラだと、小さい具材は火が入りすぎて水分を吐き、大きい具材は中まで火が通らないままになります。

切り方を揃えれば、すべての具材に同時に、均一に熱が入ります。水分を逃さず、全体を最高のシャキシャキ感で仕上げることができます。

昔、まかないを作るときに切り方を揃えないで作ってしまって怒られたのを今でも覚えています。中華を食べに行ったとき、注意して見てみてください。どんな料理も切り方は揃っているはずです。

プロの視点:
ピーマンが細切りなら、肉も筍もすべて細切り(絲:スー)にする。
乱切りなら、すべてを同じくらいの乱切り(塊:クワイ)にする。

切り方を揃えるのが難しいと感じているなら、道具を見直してみるのも一つの手です。僕は自宅でも「中華包丁」を愛用しています。

オイスター炒めを成功させる黄金比

ここまでで、炒め物が失敗する原因と、それを防ぐための「基本の型」は見えてきたと思います。

次は、「味付け」に進みましょう。

こってりとした深い旨味が魅力のオイスター炒め。しかし、いざ作ってみると「味が濃すぎてくどい」「タレが一部に固まってしまった」という失敗が起こりやすい料理でもあります。

そこでここからは、オイスター炒めを安定して仕上げるための、合わせ調味料の黄金比を紹介します。

ちゃーりー
ちゃーりー

今から紹介するのは、僕が広東料理の現場で働いていたときに、先輩から直接教わった黄金比だよ。レシピサイトを探しても、まったく同じ配合は、まず見つからないと思うよ

【オイスター炒めの黄金比】

  • 鶏ガラスープ(※):1
  • オイスターソース:1
  • 醤油:1
  • :1
  • 砂糖:1
※お湯に粉末の鶏ガラスープの素を溶かしたものでOK

黄金比が分かったところで、次に重要になるのが「どのくらいの量のタレでつくるか」です。
少なすぎると、具材をコーティングできないので、バサバサになります。逆に多すぎると味が濃すぎて、くどい仕上がりになります。

目安として、具材300gに対し、合わせ調味料は「80ml〜100ml」程度用意してください。

料理長
料理長

具材300gの目安は、1人前〜1.5人前くらいだよ

「ちょっと多いかな?」と感じるかもしれませんが、それぐらいでちょうどいいです。

少し多めに作っておいて、具材の様子を見ながら入れるのがおすすめです。無理に全部入れる必要はありません。

かーべ
かーべ

足りなくて慌てるよりも、少し余るくらいの方が安心だよね

計算の目安:
大さじで計るなら、各調味料を大さじ1強ずつ。これで合計約100mlになり、1人前から1.5人前を作るのにぴったりの量になります。

火にかける前に、合わせ調味料を必ず味見してください。
このときの正解は、「ちょっとしょっぱいかな?」と感じる濃さです。

なぜなら、炒め始めると必ず味は薄まるからです。

まず、肉や野菜が加わることで、タレは全体に広がり、濃度が下がります。さらに、どんなに手早く炒めても、加熱すれば野菜からは少量の水分が出ます。

つまり、タレ単体で「ちょうどいい味」=完成したときは薄いということです。

だからこそ、「タレだけだと少し濃い」「具材と合わさって、ちょうどいい」

この逆算ができるようになると、炒め物の味は一気に安定し、確実にプロの味に近づきます。

オイスター炒めを作る手順は、これまで解説してきた「調理の型」にすべてを当てはめるだけです。材料や分量を細かく指定するような、よくあるレシピは書きません。

ちゃーりー
ちゃーりー

その代わりに、オイスター炒めに向いている食材を紹介していくよ

各グループからお好みで選び、1人前300gを目安に組み合わせてください。

その日の冷蔵庫の中身や気分に合わせて、この表を参考に自由に選んでみてください。

どんな具材を選んでも、これまでに解説した「調理の型」と「黄金比」と「量」を守れば、必ず成功します。

広東料理の秘伝のスープ「ひん湯(鹹湯)」を使った塩炒め

「お店で食べる塩炒めは、なぜあんなに透き通っていて、最初から最後まで味がブレないのか?」
その答えが、広東料理の厨房で当たり前に使われているひん湯(鹹湯)です。

ひん湯とは、プロが塩炒めを作る際に使う、あらかじめ塩分を溶かし込んだ合わせスープのことです。

料理長
料理長

厨房では、ひん湯は常に手の届く場所にあるよ。それくらい、日常的に使われている調味料なんだ

ひん湯を作っておくメリットは、以下のとおりです。

  • 野菜に直接塩をふると、浸透圧で一気に水分が引き出されてしまいます。あらかじめ「液体」にしておくことで、野菜への刺激を和らげ、シャキシャキ感をキープできます。
  • 強火の短時間調理では、塩の粒は均一に混ざりません。「ひん湯」なら投入した瞬間にすべての具材へ味が広がり、どこを食べても完璧な塩加減になります。
  • スープと塩が一体化しているため、塩辛さが尖らず、素材の甘みを引き立てる奥深い「レストランの味」に変わります。
  • スープをベースにするため、仕上がりがみずみずしく、宝石のような美しい光沢が生まれます。

ひん湯の作り方はとても簡単です。

【基本の配合】

  • 鶏ガラスープ(または毛湯):100ml
  • 塩:小さじ1強(約6〜7g)

手順:スープを沸騰させ、塩をしっかり溶かす

炒め物を作る場合、具材300g(1〜1.5人前)に対して、50mlのひん湯を使います。

料理長
料理長

舐めると「かなりしょっぱい」けど、それで正解だよ。具材と合わさることで、自然に薄まり最終的には「ちょうどいい」と感じる約1%の塩分濃度に落ち着くよ

「ひん湯」を使った塩炒め。その手順は、先ほど解説した「調理の型」全く同じです。

変わるのは味付けだけ。手順や考え方は一切変えません。

中華炒めは、毎回やり方を考える料理ではありません。
すでに完成している「型」に、食材とタレを当てはめるだけです。

ちゃーりー
ちゃーりー

塩炒めは、最後に胡麻油を一回しして強火で一気に煽ることで、塩ダレと油が乳化し、宝石のようなツヤがでるよ

塩炒めに合う食材をまとめました。オイスター炒めと同様に、その日の冷蔵庫の中身や気分に合わせて、この表を参考に自由に選んでみてください。

各グループからお好みで選び、1人前300gを目安に組み合わせてください。

まとめ

中華炒めは、火をつけてから考えながら作る料理ではありません。
どんな具材を選び、どんな味付けにしても、やることは同じです。
この「調理の型」に当てはめるだけで、誰でも安定して、最高の状態に仕上げることができます。

  • 切り方を揃えて、火の通りを同じスピードにする。
  • 調味料はあらかじめ混ぜておき、味が一気に決まる状態を作る。
  • 油通しや隈(わい)で、具材にあらかじめ火を通していく。

あとは、熱々の鍋で全部を一瞬で合体させるだけ。

この「型」を身につければ、中華炒めはもう「失敗するかもしれない難しい料理」ではありません。成功が約束された、最もシンプルで、そして楽しいパズルに変わっているはずです。

このブログで伝えたかったのは、料理のレシピではありません。
どんな食材を使っても、どんな味付けを選んでも、失敗せずにおいしく作れる「自由」を手に入れて欲しいです。

もう、分量ギリギリのレシピ本とにらめっこする必要はありません。

  • 冷蔵庫にある好きな食材を選ぶ
  • 「型」に当てはめて、迷わずコンロに向かう。

「型」という武器を使いこなし、レシピに惑わされることなく、キッチンで自由に中華を楽しめるようになること。それが、このブログの本当のゴールです。

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